糖尿病と遺伝


飢餓に強い遺伝子を持っている人と、持っていない人がいます。
この遺伝子を持っている人は、過剰な食物を摂取する時、多量のインスリンを分泌出来る
能力があり、脂肪細胞にエネルギーを大量に蓄える事が出来ます。
その典型が、アメリカの先住民族です。我々と同じモンゴル系の民族です。
この人たちは氷河期にアジアからアメリカへ陸続きだったアリューシャン列島を歩いて
移住してきました。狩猟生活を行っていた時は、糖尿病になる人はいませんでしたが、
白人による保護政策が始まると、糖尿病の人が増えました。特にピマ・インディアンという
部族では大人の2人に1人が糖尿病になってしまいました。

 一方日本人は、この遺伝子を持っていない人が多いのです。それは農耕民族で、収穫された
食物を保存し食べるためインスリンを大量に出すという必要の無い生活をしてきました。
しかし近年、食生活が肉食になり脂肪の摂取量が増えました。
脂肪はインスリン抵抗性を増やし多量のインスリンを必要とします。
インスリン分泌能の少ない日本人は食生活の変化で、大人の5〜6人が糖尿病になってしまいました。

飢餓に強い遺伝子を持った人と、持っていない人とではどちらが糖尿病にないやすいでしょうか?
この遺伝子を持っている人は、高度の肥満になるまでは糖尿病を発症しないのに対し、
持っていない人は肥満と言えないレベルの少しの体重増加で糖尿病になります。
同じ量を食べる限り、この遺伝子を持っている人の方が糖尿病になりにくいと考えられますが、
実際は、この遺伝子を持っている人の方が、過食出来るため飽食の時代では糖尿病の発症率
は高いのです。遺伝因子よりも環境因子の方が大きいことが分かります。

日本人は少しの過食、脂肪摂取の増大で、糖尿病になりやすい民族です。しかし日本には
世界遺産にも登録された健康長寿の日本食があります。この食事を見直しましょう。
日本食は栄養のバランスに優れた食事です。ただ少し塩分が多めなので薄味にしてダシを
効かせ料亭の味にして食べましょう。