山の料理人が挑む蕎麦の話(雲頂山日記番外編其壱)
蕎麦を身体で分ろうと、栽培から始める
白い花が咲いた。宿の脇の畑で自家栽培している蕎麦の花だ。蕎麦畑の広さは1反強。自家栽培を試みて8年。毎年形も色も違う穂が取れ続けている。やれる事は全部やってるけど、最終的に善し悪しは自然が決めよる。
8月下旬に種を播いて、9月中旬に開花。花の中心部が黒くなりだす10月中旬に手刈りする。それを天日干しして蕎麦の実を振り落とす。
世の中には蕎麦に魅せられた人があまりにも多い。食べ手も作り手も、その奥深さに触れたらその先には終わりがない。山菜、川魚、鹿、猪、松茸など山の料理をやりつづけてるけど、蕎麦ほどシンプルで全てを集約した食べ物はないと思って、まだまだ勉強不足なので、栽培から始めてみた。
今のところはあまごや山菜、猪肉を使った一品とコース料理が主軸で、これらの仕込みの合間に栽培と自家製粉、蕎麦打ちをやってる。まだ予約がないと出来ないし、一部の常連さんだけが食べに来てくれる状態だ。
十割蕎麦は難しい! 自然と調和しなきゃ打てん
予約が入ると、まず行なうのが玄蕎麦の仕入れだ。自家栽培しているとはいえ、まだまだ微量。ほとんどは隣町の知人から仕入れている。
玄蕎麦は石臼で手挽きする。10枚分ならざっと1時間もかかる。こだわりじゃなく、身体で蕎麦を感じ取りたいからやっている。
挽いた蕎麦粉をふるいにかけて粒を揃える。そして打ちに入る。
気候に応じた加水量で丹念に、そしてパワフルに捏ねる。蕎麦の純粋な味わいを守るために、蕎麦粉だけで打つ。だから湿気の多い日は加水率が低く、粗めの粉や黒い外皮を加えたりするときはお湯でないとつながらない。蕎麦が生き物だということがよく分る。
最後は延ばした蕎麦を包丁で切り分け、その日の内に客に出す。
純粋な味を楽しんでもらいたいがために、つなぎの小麦粉は入れていない。だから蕎麦の味は、その日その日によって微妙に変化する。その一期一会の味が蕎麦の醍醐味なのだ。
風味が楽しめるように、最初はそのまま口に含む。次に高知産の天日塩をちょいとつけて。そして最後に宗田鰹の深い甘味が利いた汁で食す。それぞれに変化する蕎麦の味が満喫できる。
2007年 秋 店主記
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